はたらく人たち
「出版売上印税管理の業界標準を作りたい」PUBNAVI開発の裏側を直撃! #WhatIsMediaDo?

こんにちは!メディカム編集部です。

昨今、出版のデジタル化が目覚ましく進んでいます。しかし多くの中・小規模の出版社では、売上データや印税の取りまとめなどを手作業で処理せざるを得ず、電子書籍の増加に伴って、業務負荷の増大が深刻な課題となっているのです。

これを業界横断的に解決しようと、出版業界特化のシステム開発を長年手がける光和コンピューターとメディアドゥが共同で開発したのが電子書籍の売上印税管理システム「PUBNAVI」です。2022年6月1日、正式にサービス提供を開始しました。(プレスリリースはこちら!)


このシステムの営業や開発に携わるメディアドゥのプロダクトマネジメント室・榊原 輝雄さん、技術本部・高安 耕太郎さんをメディカム編集部が直撃!🎤開発の経緯や仕事を進める中で見聞きした業界の課題、得られた学び、プロダクトに込める思いなどを聞きました。

榊原 輝雄さん

2010年より「電子書籍ビューアと配信システム」を開発、書店や取次への提供に従事。2017年3月メディアドゥ入社、ビューア技術を活用した新規プロダクトの研究開発を推進。2019年より「AIを活用した音声自動文字起こしサービス」を開発、事業化を行う。2021年よりプロダクトマネジメント室でPUBNAVI のサービス立ち上げを担当。

高安 耕太郎さん

国産大企業向けERPパッケージベンダーでの開発、メディア系スタートアップ企業のプロダクトリード、外資系SaaSベンダーのプリセールスなどの経験を経て、2021年3月メディアドゥ入社。技術本部に所属し、PUBNAVIの立ち上げフェーズからサービスインに至るまで、プロダクト開発、エンジニア体制の構築に従事。

「自社単独では自動化に乗り出しにくい」

PUBNAVI開発の経緯を教えてください。

榊原:出版社さんの売上印税支払い業務は定型化された方法がほとんどありません。書店や取次からさまざまなフォーマットで送られてくる書籍の売上データを、各社が独自に手作業で処理していて、とても苦労されていたようです。

各社が独自の方法で個別対応せざるを得ず、スキルを持った方々がうまく処理してきたものの、電子書籍は基本的に絶版がなく半永久的に増えていきます。このままだと、いつか手作業では限界を迎えてしまいます。自社単独では業務自動化のシステム投資に乗り出しにくい会社もある。これを「出版のDX(デジタルトランスフォーメーション)、IT化における大きな課題だ」として解決に立ち上がったのが、新名さん(新名 新・メディアドゥ取締役副社長 COO)と、光和コンピューターの寺川社長(寺川 光男・光和コンピューター代表取締役)でした。

出版業界の横断的な課題をSaaS※で解決する公共性の高い取り組みだったため、2020年に経済産業省「J-LOD」補助金の採択をいただき、まずは実証実験からスタートしました。これを発表してすぐに、多くの会社から開発開始を歓迎する声を寄せていただきました。

※SaaS:ソフトウェアをインターネットのクラウド経由で提供すること。ユーザー側にソフトウェアを導入せず、

提供者側で稼働させてクラウド上でサービスとして利用することで、導入コストを抑えることができる。Software as a Serviceの略。

今までなぜ自動化されてこなかったのでしょうか。

榊原:もちろんシステム投資を単独で行ってきた出版社さんもありますし、業界横断のシステムも、全く取り組まれてこなかった訳ではないようです。しかし、過去に動きがあった当時はまだ、Webベースでサービスを提供するSaaSが主流ではなかったこともあり、各社のニーズや、業界全体への対応が難しかったのではないでしょうか。

各社の事情を深く理解する

PUBNAVIの開発で、最も重視してきたことは何ですか。

高安:エンジニアであっても各出版社さんの業務の進め方を深く理解し、フィードバックを受けてPDCAを回すことが大切です。想定だけではなくヒアリングをしたり、実際に使ってもらったりすることで、初めて分かる個別の事情があります。売上の報告は出版社さんと契約されている販路ごとにフォーマットがバラバラですし、印税の計算パターンも出版社さんごとにルールが違います。著者さんへの支払い報告の帳票も、各社それぞれが必要とする文言やレイアウトの要件があり、それらに対して柔軟に応える必要がありました。

要望の目的を捉え、時には提案も

その個別対応をPUBNAVIでも全て可能にするのが重要なのでしょうか。

高安:全てがそうではありません。開発リソース面での費用対効果の観点から必要な機能かを検討したり、例えば「こういうチェックができるようにしてほしい」というご要望に対して、そもそもチェックする必要がないような仕組みに根本的に作り直したりもします。出版社さんから出た要望のさらに根本的な課題や目的をヒアリングしながら、どの会社にとっても最適なシステムを目指すことを大切にしています。

榊原:時にはPUBNAVIの標準機能にフィットするように、印税契約の条件や対応する報告のあり方などを見直す提案をすることもあります。例えば、共著で3人の著者さんが書いた本があったとします。印税を3分割して支払うとしたら、割合は33.3333…%となって、小数点以下をどう処理するかのルールは各社で様々です。そこで「小数第6位まで計算する」としていた契約をシステムで運用するための一定の基準に見直してもらえるようお願いする、というようなこともありました。

高安:エンジニアが打ち合わせに同席して出版の現場を学び、エンジニア側の観点から提案することもあります。仕様の検討をビジネス側に任せるのではなく、エンジニア側も出版社さんごとの事情を理解して、困りごとを解決できるように心掛けています。様々な出版社さんの要望に応えながら複雑な業務を紐解いて、答えが無いものを共通化させていくのはとても難しく、そこがこの業界システムの市場の参入障壁にもなっていると思います。

その難しさはどのようにして乗り越えましたか。

高安:まだ乗り越えている中ではありますが、全てを言われた通りに開発するのではなく、理想を追求することを強く意識していますし、それができる素養のあるメンバーが多いことが上手く進められている要因の一つだと思います。例えば、BtoBシステムではあるものの、文言やボタンの位置一つを取っても、意図やUXを議論しながら作るようにしています。

榊原:会話を続けることで難問を乗り越えられるのが、自社開発の強みですよね。外注して開発するとなると、コストの問題もあって、無数に出てくる課題を全てクリアすることはできないと思います。社内会議も一時は週2回の頻度で行っていましたが、常に話し合うべきことがある状態で、無駄と感じるような時間はありませんでした。

高安:仕様や業務要件の落とし込みなどの知見を光和コンピューターさんにお願いしながら一緒に取り組んでいますが、開発としては別会社というような隔たりは無く、同じ会社の別部署の方々くらいの距離感でお仕事をさせていただいています。

簡単に導入できるシステムを、時代に合わせて改善し続ける

PUBNAVIを利用することのメリットとは何ですか。

榊原:ローンチ後も継続して開発を続けられることは、自社開発である大きな強みだと考えています。PUBNAVIの開発は、様々な要望をいただくうちに「そんなに甘いものではない」と痛感しました。ローンチをしばらくお待たせしてしまったのも、単に画一的なシステムを作るのではなく、業界標準を志向する方向に転換したことが理由でした。サービス開始を待っていただいている出版社さんも非常に多くいらっしゃいます。正式ローンチと同時に提供開始した「無料お試し版」もぜひご活用いただきたいと思います。

高安:榊原さんの言うように、確実に業務効率が上がるサービスになるよう、求める基準はどんどん上げていきました。業界標準を目指しているシステムを、SaaSで簡単に導入できることは大きなメリットだと思います。

時代のトレンドに合わせて機能を追加する俊敏性も高いです。電子書籍が伸長する出版業界の課題を支援する目的で動き出したシステムですが、将来新しく出てくる媒体にも対応し続けることが可能だと思っています。さらに、利用いただく各社の要望に合わせて柔軟に改善していくので、システムが進化し続けることに安心感も持っていただけるのではないでしょうか。

実証実験やベータ版では、出版社さんからどのような声がありましたか。

榊原:報告書類をPDFで出力してメールで送れるため、著者さんへの報告が郵送からメールに切り替えられることは嬉しい、という声がありました。商品管理の面では、新しい書籍が出たときに、Excelに手作業で行を追加していたものも手軽に管理できるようになるというのも好評をいただいています。こういったサービスがお届けできることは、新しいものを創造している感覚ですし、非常に価値ややりがいを感じます。

高安:市場へ展開するフェーズに携われることは、エンジニアとしてとても貴重な経験だと感じています。業務へのソリューションの答えをゼロから作っていくことは、エンジニアの中には苦に感じる人もいるかもしれませんが、自分たちが考えた製品で困りごとを解決してもらえる喜びは大きいです。

業界標準をつくり、出版ビジネスのプラットフォームへ

開発を通して、どんな学びや発見がありましたか。

高安:想定以上に業界特有の商習慣があり、業務パターンが無数に存在していたことは驚きましたし、それをプロダクトとして形にすることは非常に学びになりました。

榊原:出版社に報告される電子書籍の売上データは、書店ごと、出版社ごとにフォーマットや項目の内容が違うことが多いようです。

どんな業界であっても、業務パターンを増やし続けることは健全な姿とは言えません。将来的にはPUBNAVIがそうした業務の業界標準フォーマットをつくり、出版ビジネスのプラットフォームのような存在になれたら、と考えています。


今回は、6月1日にサービス提供を開始した電子書籍の売上印税管理システム「PUBNAVI」のプロジェクトの裏側をご紹介しました!

PUBNAVIは正式ローンチと同時に、「無料お試し版」の提供も開始しています。多くの出版社様にご利用いただけるよう、今後も改善の努力を重ねてまいりますので、ぜひご期待ください!

「PUBNAVI」にご興味をお持ちの方はこちらをご覧ください。

この記事をシェア!

この記事を書いた人

メディカム編集部
メディアドゥ広報グループの個性豊かなメンバーが運営しています。「なんだかわくわくする」と思ってもらえるような情報を発信していきます♪
こちらの記事もおすすめ!
はたらく人たち
現場がきっかけのプロジェクト。Medicome!立ち上げの裏側を聞きました!
2020.6.12
はたらく人たち
2020年オンライン忘年会の舞台裏をのぞいてみました!
2020.12.25
はたらく人たち
メディアドゥの具体的なお仕事を教えて!電子書籍流通事業・出版者支援編 #WhatIsMediaDo?
2020.11.2
はたらく人たち
もっと身近に!電子図書館事業部の取り組み #WhatIsMediaDo?
2021.2.24
一緒に働きたい方はこちら!
メディアドゥ採用情報
メディアドゥ新卒採用